のせ歯科医院 能勢雅光院長

[医院経営のノウハウと舞台裏]

 「経営に悩む医療人の役に立つならば」・・・軌道に乗るまでの失敗談や苦労、成功の秘訣やノウハウ、そして“次の一手”など、「他では開示されない貴重なノウハウ」を、教えてくれます。
 有力院長が次々と登場するので、月に2回はアクセスして、「自院の方向性チェック&考察」の機会にご利用ください。

のせ歯科医院
能勢雅光院長

脳卒中で一命を取り留めた「障がい者」
それでも患者さんが通院し、
治療を信頼してもらえる理由

一番の苦労

2度の脳卒中で、認定「障がい者」に

 開業して14年目、全てが順調に見えたある日、脳内出血は起きた。しかも人生2度目であった。もし出血場所が悪かったり、出血量が多かったり、救急車に乗るまで時間が経っていたら、どうなっていたか分からない。幸いにも命は助かったが、言語障害(構音障害)が残った。入院中は、「自分は歯医者を続けられるのか」「患者さんは来て下さるか」「家族を生活させていけるか」と不安は渦巻いたが、手足は自由に動き、言葉も少しではあるが喋れるようになってきたため、約1か月で退院し、自宅療養しながらも仕事に復帰した。
 入院中に見舞いに来たスタッフから、「患者様に電話をすると、ほとんどの方が『先生の退院を待ちます』と仰るので、応急処置が必要な方だけ他院へ紹介しました」と言われ、大変感激したことが短期復帰への原動力になった。
 とはいえ、診療を再開して患者さんがすぐに戻ってくるわけではない。当月の診療報酬は発病前の半分となり、発病前から大きく落ち込んだ。それでも従業員に「自分の病気が原因の給与削減」をする訳にはいかず、満額を支払い続けた。新たな借り入れをして、しのいだ。

一番の失敗

「医者、歯医者の不養生」を地でいってしまった

 患者さんに健康習慣を説く医療者が、実は不摂生だったりする。自分の場合も、発病前は歯科医師会の先輩方から連日連夜のお誘いで暴飲暴食をつくし、睡眠時間も少なかった。若い頃にスポーツが得意だったぶん、かえって「メタボ」街道に突き進んでいた。ある夜、帰宅すると、右手がうまく動かず、廊下をまっすぐ歩けない。その時は「少し調子が悪いな」と思う程度だったが、翌朝「おはよう」と子供に言われても返事が出来ず、初めて異変に気づいた。症状が出始めてから6時間は経っていただろうか。今でも思い出したくない瞬間だ。
 主治医からは、「まさか仕事復帰できるとは思いませんでした」と驚かれた。「回復出来たのは、筋肉の量が多かった為に、リハビリの効果が出やすかったのでしょう」とのこと。いま健康な先生方でも、何かしらコンスタントに運動をして、強い身体を作っておくべきだろう。

一番の特長

「障がい」医療者の治療、に逆に安心感を持つ患者さん

 私は「言語での」障がい者手帳を持っている。患者さんのなかには、障がいを持つ歯医者を敬遠する人もいるだろうし、実際「はっきり喋ろよ」とか、受付で「先生が何言ってるか分かんないから、他の病院へ行くね」と言われたこともある。その一方で、無理をすることがない私の治療姿勢を評価し、安心して下さる患者さんもいる。
 「障がい医療者ならではの治療」とは何か?まず、構音障害を持つと、瞬間的に言葉を発することが出来ない。そのため、診療中は出来る限り患者さんの動きなどを予測した治療に変わった。その甲斐あってか、誤って粘膜を切ってしまうとか、違う歯を治療する等のミスは発病後も発生していない。
 また「言葉で言い訳する事が出来ない」ことはメリットにもなる。落ち着いて、基本に忠実な治療をする様になったし、客観的根拠を示したインフォームドコンセントに力を入れるようになった。具体的には、「どの歯のどの部分を治療するかを口腔内カメラで撮影し、説明してから治療を開始して、治療後どうなったかを再度撮影し、患者さんに視覚的に納得して貰う事」に力を入れるようになった。インフォームドコンセントの根拠になるだけでなく、自分の治療技術を客観的に判断する指標にもなる。
 もうひとつ、治療成果以外のプラスアルファを患者さんに提供できるのも、障がい医療者ならではだ。「ここに来ると、勇気をもらえる」と言っていただける。私は、発病後1年で水泳の練習を始め、今では県の強化選手にも選ばれ「障がい者水泳日本選手権」に出場するまでになった。障がい者でもしっかり診療を続け、趣味の水泳を頑張っている姿を、患者さんはとても喜んで下さっている。

一番の自慢

開業後も「一匹オオカミ」になってはいけない

 患者数が復活をした理由は、スタッフが一丸となってサポートしてくれたことが大きいが、もう一つは休診日を最小限に抑えたことだろう。私が入院・自宅療養中に、歯科医師会の仲間の先生方や大学時代の友人が、自分の休診日に交代でスケジュールを組んで、代診に来てくれた。涙が出るほど嬉しかった。長期休診は、患者さんが離れ、近所の評判も止まるが、スタッフも解雇しなければならない。すると再開するときには、再びゼロから採用や教育をし直してチームワークを築くことになる。
 開業医というのは「一匹オオカミ」になりやすいものだ。このような大切な仲間を、学生時代、開業後を通じて作れていた事が自慢だ。

一番の秘訣

如何に良いスタッフを揃えるかにつきる

 当院が成り立っているのは、スタッフが患者さんとの間を取り持ってくれるからだ。私の病気を理解し、私の声を常に聞こうとしてくれ、私の説明を患者さんへ通訳してくれる。「大変ありがたく、気持ちの良いスタッフが揃った」と思って、日々感謝をしているし、実際、常に「ありがとう」の声掛けをしている。
 良いスタッフのイメージは、具体的には次の通り。

  • 仕事に対して一生懸命か?または、いい加減か?
  • スタッフ同士仲良く出来るか?または、新人をいじめるか?
  • 院長の見ていない所でしっかり働いているか?または、サボっているか?
  • いつも明るく、にこやかか?または、暗くて笑わないか?

 こんなことは数十分の面接ではわかりにくいが、ポイントは次の通りだ。ただしどんなに吟味しても失敗する場合がある。その場合の決断は早めに!

  • 履歴書をすべて埋め尽くす様に書いてくるかを見る。本当に雇用して貰いたいという心意気の有る無し。
  • 食べ物に好き嫌いがあるか質問する。当然無い方が良い。平気で好き嫌いを口にする方は、スタッフ間で問題を起こしたり、新人をいじめる傾向がある。
  • やってきた部活動で気をつけてしてきた事を聞く。困難にぶつかった時にどういう対処をするかが分かる。逃げるか、立ち向かうか。
  • 転職ならば理由と、それに対してどのように対処したかを聞く。


一番の夢

今のスタッフが離職後も再び戻ってきてくれる医院

 私は新しモノ好き。開業して16年だが、開業当時と同じ診療器具、レントゲンシステム、カルテシステムはほとんど無い。良いと思ったものは積極的に導入する。
 一方でスタッフについては、「今の人達にずっと辞めないでいて欲しい」と考えている。どうしても結婚、出産などで一時的に離職せざるを得ない時も来るだろうけれども、お子さんの手が離れて復職できる時には、また当院に戻って来てくれるような、そんな医院を目指している。

医院プロフィール

のせ歯科医院

静岡県浜松市南区恩地町393
TEL:053-425-5999
医院ホームページ:http://www.nose-shika.com/


開業し16年経つが、白を基調とした清潔感ある外観。最新のデジタル機器も完備。国道一号線にほど近い都盛町交差点からすぐ。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

歯科、矯正歯科、小児歯科

理念

困難は乗り越えられる人にのみやってくる

院長プロフィール

能勢雅光(のせ・まさみつ)院長略歴

1992年 昭和大学歯学部卒業
1992年 歯科医師国家試験合格
1992年 浜松市 加藤歯科診療所勤務
1995年 のせ歯科医院開業、院長就任

所属学会他

顎咬合学会認定医

言葉は毎日練習をしていて徐々に戻りつつあるそうです。
水泳ではなんとパラリンピックを目指すほどで、バタフライの選手だとか。
時折りジョークを交える、優しいドクターでした。

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